リック・フォード
Rick S. Ford

2023年、ニューヨークで演説中のフォード(後方にいるのは支援者)
氏名リチャード・サミュエル・"リック"・フォード
居住地アメリカ合衆国 コロンビア特別区(ワシントンD.C.)
職業政治家、アメリカ合衆国大統領
所属政党アメリカ改革党(2008-2011)
共和党(2012-)
出身アメリカ合衆国 ルイジアナ州 ニューオーリンズ
渾名ディキシーのトランプ
ルイジアナのトランプ
現代のヒューイ・ロング
アメリカのル・ペン
フォード No.2
穏健なトランプ
フォード・ザ・ディキシー(Ford the Dixie)
アメリカの「表現の自由戦士」

リック・フォード、フルネームでリチャード・サミュエル・フォード(英: Richard Samuel "Rick" Ford)とは、アメリカ合衆国の政治家、経済学者。アメリカ合衆国第46代大統領であり、2020年大統領選挙において歴史に残る決定的な勝利を収めた。その大衆主義的かつ反大企業・反共・文化的保守主義を全面に押し出した政治スタンスと政策から、トランプに並ぶアメリカの急進右翼の政治家として有名になった。2000年代後半から2010年代前半まではテレビ番組やラジオ番組に出演する経済学者としてインターネット上で話題になり、政界入りしてから政治キャリアも少ない中で大統領に「奇跡的な」当選を果たした。本人は2024年大統領選挙における再選と二期目突入を狙っていると公言している。



生い立ち

幼年期から学生時代にかけて

1983年4月2日、ルイジアナ州ニューオーリンズのある労働者階級の家庭に生まれる。父ギルバート・フォードはブルーカラーの工場労働者、母アンジェラ・フォードは専業主婦であった。家族構成はフォード、父ギルバート、母アンジェラ、一つ年上の姉ローズの四人だった。
家は裕福であったとは言い難く、彼は自身の回顧録において自分の生まれ育った環境が自分のポピュリスト的かつ反エリート的な政治思想に影響を及ぼしたのではないか、と振り返っている。短期間であるもののトレイラーハウスやテントで生活したこともある。幼少期、複数の友人の話によればフォードはかなり内気な学生だったというが、小学校時代と中学校・ハイスクールとで人格が大きく変わり、幼少期とは対照的に剽軽な学生になっていたという。しかし、成績は悪く、サウスイースタン・ルイジアナ大学からは途中で落第し、そのまま退学した。

経済学者として

大学からの落第後、二ヶ月間カウンセリングと不安障害の治療を受け、回復後の2005年、20代の若さで経済学を独学で勉強し、インターネット等を通じて有名となりテレビ番組に出演する経済学者となった。当初はロン・ポールやハビエル・ミレイのようにオーストリア学派だったが、のちにケインズ学派へと転向する。ディベート番組において社会主義者や自らが敵視する勢力に対して強い言葉を使い罵倒にも近しい毒舌を用いて舌戦に臨み、そして彼の筋の通った論理で相手を論破する、というスタンスが注目され、コメンテーターとしてアメリカ全土のテレビ・ラジオに出演した。また、2008年大統領選挙において討論会にゲストとして招待されたこともある。

政界入り

2008年改革党に入党し、改革党代表で大統領選挙に出馬することを試みたが、候補者争いで脱落し討論会に参加こそしたものの断念。2012年大統領選挙では中立を貫いたが、テレビ番組においてはオバマ政権の政策に対する批判を続け、また保守派の毒舌の論客として、共和党支持者の一部から信奉される中でティーパーティー運動にも一役買う人物となった。2016年大統領選挙ではトランプ大統領を支援しており、トランプもフォードを重要な支援者として認めていたが、トランプ当選後の「アメリカ第一政策」に幻滅した彼はトランプと訣別し、トランプと大部分は似通っていながらもまた別の政治ビジョンを形成することとなった。

2020年大統領選挙、大統領就任

フォードは2008年大統領選挙以来、現副大統領のロニー・スペンサーをランニングメイトとして、大統領選挙への出馬に再挑戦した。フォードは予備選挙において彼の故郷ルイジアナで勝利を収め、保守主義と大衆主義を支持する傾向が強く見られる南部、労働者階級の多い中西部で多くの票を獲得し、地滑り的勝利でトランプを破って選挙の第一線へと躍り出た。その間もフォードの歯に衣着せぬ過激な言論は続き、共和党のフォード支持派は熱狂した。民主党大統領候補者カマラ・ハリスとの熾烈を極める選挙戦に勝利したフォードは、2021年1月、大統領就任式で宣誓を行い正式に大統領となった。現在、フォードはトランプの孤立主義・保護主義政策とはまた違った経済政策を取っており、保守主義と自国第一の思想をまず念頭に掲げながらも、国際社会との協調をトランプほど失わせない「穏健なトランプ」として見られている。

人物

・普段の激しく痛烈な発言とは裏腹に、人格としては穏やかな性格として知られており、自身のTwitterアカウント等で多くのジョーク(最も、滑ることを分かり切ったような"親父ギャグ"レベルの陳腐な駄洒落だが)を呟き、議会の答弁においても時たま冗談や言葉遊びを披露する。
・最年少で大統領に就任したフォードは現代のアメリカ大統領にしては珍しいファースト・レディのいない大統領であり、生涯独身を貫くつもりであると公言している。
・フォードは、2022年のエイプリル・フールのジョークで、約一日間自身のTwitterアカウント(@POTUS)のプロフィールアイコンをゲーム「ブルーアーカイブ」のロゴに変更したことがある。
・彼は、主に選挙戦や街頭演説の場面において、あるいは議会やテレビ局でさえもサングラスを掛けて登場することで有名であり、サングラスをつけた彼の姿は「シェーディド・フォード」(Shaded Ford)として知られている。本人はこれについて「ただお洒落やギャグのために掛けているだけ」と説明しており、目には何も異常はないという。また、サングラス姿の彼はインターネットミームにもなっている。
・ネット掲示板4chanにおいては、彼はいわゆる「ネットのおもちゃ」のような扱いを受けており、彼を描いた二次元のアニメイラスト、女体化など、様々な形でいじられている。
・プライベートの時間では主に読書、旅行を趣味にしているという。彼の愛読書は「キャッチャー・イン・ザ・ライ」であり、2022年のNYタイムズ紙の取材では「ゴルフは嫌い」なことを明かしている。
・フォードは「アメリカ史上最も庶民的な大統領」の異名を持ち、高額の給与を得られる大統領という立場にいながら金持ちらしい暮らしはしていないという。とある大統領補佐官の一人は、「彼の生い立ちからして、金持ちの暮らしに対する反感があったからではないか」と推測している。

ジェラルド・フォードとの関係

ニクソン元大統領の退陣後、副大統領から昇格する形で新大統領に就任し、その次の大統領選挙で敗北したジェラルド・フォード元大統領は、名前を含め彼と多くの共通点を持っていることでよく知られており、フォードが「21世紀のフォード」「フォードv2.0」などといった渾名で呼ばれるのはそのためである。また、運動神経が悪い点もジェラルド・フォードと重なるため、バラク・オバマ元大統領が冗談混じりで「生まれ変わりなのではないか?」と発言したこともある。

語録/過去の発言

・「対テロ戦争は、テロリストのろくでなしを消毒するための正当な戦争だ」(2005年、ブッシュ大統領の介入主義政策について)
・「左翼やマイノリティの野郎どもが国を統べることになることで、アメリカがどれほど堕落するかあなたにはわかっているのか?」(2008年、大統領選挙を受けたテレビ番組で)
・「アメリカが社会主義国に傾倒することはない——あるいは、その可能性の有無に関わらず、そのような大惨事は発生すべきでない。」(2008年、大統領選挙討論会で)
・「エリートや上流階級は、99パーセントの人々を所詮ただの置き台か何かだと思っているだけだ。トレイラーハウスで暮らしたことさえある私にはそう言い切れる。」(2012年、経済テレビ番組で)
・「ポピュリズムや大衆主義が、ヨーロッパや日本などの国々で否定的なニュアンスで使われているという現実は、非常にショックである。」(2012年、ニュース番組出演時に)
・「ポリティカル・コレクトネスは、文化を侵略する害毒である。」(2018年、アレックス・ジョーンズ・ショーで)
・「アメリカは再び生まれ変わる!国民の敵を打ち負かせ!」(2021年、大統領就任演説で)

政治ビジョン

右翼大衆主義

フォードは、これまでのアメリカ大統領の中で前例の無い「癖の強い」人物であり、支持者からは「国民に寄り添うアメリカ初の大統領」と言われている。彼の政治的イデオロギーは、極端な保守主義と右翼ポピュリズムであるとよく論じられ、彼が経済学者となった時からずっと続いている「遠慮なくモノをガンガン主張する」スタイルは、しばしば物議を醸し関係者が火消しに追われることも少なくない。しかしながら、実際に行う政策は比較的激しいものではなく、一部の学者の間では妥協や折衷案で支持基盤をつなぎ止め、政権の安定を保とうとする「現実主義者」で、トランプに比べると賢明で慎重な政治家ではないかと言われている。
社会主義、共産主義に対しては強い言葉で批判し、アメリカ共産党のジョン・バックテル、アメリカ民主社会主義者党のマリア・スヴァートを、それぞれ「脳をアカに犯されたろくでなし野郎ども」と呼ぶなど、急進左翼勢力に対する強い対抗心があることが発言の節々から伺える。また、フォードはしばしば民主党の政治家の一部に「ファシスト」と呼ばれるが、本人はそれをいつもの如く強い言葉で激しく否定している。
同性婚、ポリティカル・コレクトネス、SDGsや環境政策に極めて否定的な見方を示す一方で、他の保守主義者のようにキリスト教などといった宗教を重視するわけでもなく、一部のキリスト教保守主義者からは皮肉を込めて「信仰なき愛国者」と呼ばれる。本人は不可知論者を宣言している。また、大企業に対してもかなり批判的な姿勢を取り、経済学者、政治学者、投資家の間ではフォードはマイケル・ブルームバーグ、ジョージ・ソロス、ウォーレン・バフェットなどを「毛嫌い」しているとされている。

オルタナ右翼との関係

2021年、大統領就任から数週間後、トランプと訣別したオルタナ右翼の支持者たちの多くは、トランプ主義に代わるある種の「代替案」としてフォードを支持したが、トランプと同じようにフォードはオルタナ右翼と自身の直接的な関係性を否定した。しかし、オルタナ右翼からの支持を認めないという旨の声明は一度もしていなかったため、これもまた彼を「ファシスト」と呼ぶ民主党左派の議員たちが「フォードは自分の利益のためならネオナチにさえ手を貸す」という都合の悪い情報をばら撒く材料になっているのである。

2017年の極右暴動に対する反応

2017年、トランプを支持しコメンテーターとして活動中だったフォードは、当時シャーロッツビルで起きた主に4chanで活動するオルタナ右翼やネオナチによる「ユナイト・ザ・ライト」運動に関し、「彼らはただの余計な厄介者だ、アメリカから出て行った方がいい」とのコメントを発表した。この時代のフォードの毒舌はいつも通りであり何も珍しくはないが、この粗暴な言葉を使って非難する対応はオルタナ右翼のデモ参加者側を直接非難しなかったトランプと比較され、火消しに追われたトランプとは対照的にアメリカ世論は彼に好印象を持つことになった。

経済政策

フォードは、1930年代にルイジアナ州知事として有名になったヒューイ・ロングと同じく、「富裕層の富を貧者に再分配する」というポピュリズムを熱烈に支持し、それが彼が「現代のヒューイ・ロング」と呼ばれる所以にもなっている。反エスタブリッシュメント、反エリート、反学歴社会の三つの原則を基にしたフォードの経済政策は「モダン・フォーディズム(Modern Fordism)」の呼称で呼ばれ、アメリカ経済学に大きな影響を与えた。

外交・国際関係

彼は熱烈な新保守主義の信奉者であり、自由民主主義を保護するために西側諸国との関係改善を主張する。ヴァレール、フランス、ロシアなどとの友好関係樹立の試みはその代表例であり、反対に社会主義国・共産主義国に対しては敵対している。フォードの外交政策は、一般的には冷戦期や21世紀の大統領と同じ通りである。

評価

「大胆不敵で恐れ知らずの大衆主義者」、あるいは「毒舌経済コメンテーター」として知られている彼に対する国民の評価は、まさしく賛否両論である。右派や保守派の中ですら、彼を支持する層とそうでない層に分かれているが、多くの保守系メディアや合衆国議会議員は彼をある程度は肯定的に見ているようだ。また、とあるロサンゼルスの記者は、「見かけは大胆だが、突拍子のないことをやるような政治家ではない。しかし、左翼や一部の人々にとっては到底受け入れ難いだろう」と中立的な観点で彼を評価している。
オルタナ右翼の創設者にして代表的な論客、リチャード・スペンサーは「ドナルド・トランプよりも紳士的で、余裕があり、支持に値する政治家だ」と説明して彼を称賛したが、フォード本人はオルタナ右翼との関わりを持つことを恐れたのか「私はアメリカの多様性をぶち壊すような白人至上主義者どもに手を貸すつもりはない」と、遠回しにスペンサーを罵倒し、その後オルタナ右翼に対して何ら声明を発表しなかった。
2017年以降訣別したことによって、「政治的イデオロギーを分かち合う友」から「ライバル」へ変わったトランプは、彼のことを「可もなく不可もない、微妙な大統領である」と言葉を濁して揶揄し、フォードにしては珍しくこの発言に対して「アメリカを世界から切り離すような真似をする人間ではないだけ、2017年から2021年までの四年間よりよっぽどマシだ」と反論した。

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